提言 <SDGsゴール別>
いのち輝く未来社会のために人類が為すべきこと
治療方法が見つかっていない病気で苦しむ人たちの想いと声を聞いて共に考える仕組みづくりをしよう
【概要】
世界で医療技術が発展したことで、多くの疾患に対する予防や治療が進み、“がん”を含めたこれまで不治の病と言われてきた疾患が治療可能となっています。これは、多くの国で平均寿命が延伸していることの要因の一つとして誰も否定はしないでしょう。
一方、医療技術の発展により、希少性の高い疾患、いわゆる「希少疾患」がより多く特定されるようになりました。希少疾患は多くの場合、患者数が少ないこと、病気のメカニズムが複雑なことから治療や創薬の研究が進みづらく、難治性の病、すなわち「難病」となっており、診断された本人や家族を含めた周りの人々の生活の質の低下は避けられません。現在、世界で特定されている希少疾患の数は6,000以上、患者数は3億人に上ると言われ、多種多様な「いのち」という全体の視野で見た際に、決して“希少”な課題ではないことが分かります。
その課題に対してどう向き合うか、見渡すと幾つかの取り組みが見えてきます。一つは、患者若しくはその家族が情報を発信し、同じ疾患で悩む方との交流等を行う「患者・家族会」の取り組みです。情報が少ない中で、経験者の体験を知ることができ、相談もできるという貴重な場になっています。しかし、患者・家族会の存在する希少疾患は一部であり、すべて網羅できているわけではありません。次に、希少疾患全体の啓発を行い、患者・家族と一般社会をつなぐ「Rare Disease Day・世界希少・難治性疾患の日」という取り組みがあります。患者・家族の生活の質の向上を目指し、2008年にスウェーデンから始まり、現在では日本を含め述べ100カ国で開催されています。
どちらの取り組みも、患者本人、家族が活動の中心にいることが共通点であり、強い想いとエネルギーで活動の輪を広げつつあります。しかし、課題はその活動を持続的に可能とする支援が少ないことです。それぞれの活動に対して民間企業からの寄付は行われていますが、各企業は主事業とは間接的な繋がりでしかなく、持続可能な形での支援となっていないのが実情です。
すべての「いのち」が輝く新しい時代をより早く切り拓くためにも、2050年のSDGs+beyondとして、希少・難治性疾患領域での患者・家族の強い想い、エネルギーを中心に民間企業が共に活動を行い、課題解決がより進む仕組みづくりを提案します。
近年、スタートアップを中心とした民間企業において、患者・家族と共に、医療・生活の質の向上を目指したサービス作り・事業化を行うケースが出てきています。その企業では、主たる事業を希少・難治性疾患の課題解決におき、収益化も組み込み持続可能な形を目指した活動を行っています。一つの事例として難治性のてんかん患者・家族と共に創るプラットフォーム「nanacara(ナナカラ)」を主事業としているノックオンザドア社の活動が挙げらます。ノックオンザドア社は2018年に創業、その後述べ数百人を超える希少・難治性疾患患者・家族とのチーム作りを行い、その声に基づいた“難治性てんかん”における発作の記録・管理・共通プラットフォームを構築しました。このプラットフォームにより、日々の症状管理や家族・医師への伝達も簡易化され、精神的・物理的余裕をこれまでよりも持つことができています。また、このプラットフォームに集まる服薬や症状の記録のデータは製薬企業での研究・開発に活かすことができ、収益化の一つとなると共に、より良い医療が患者に届けられるための一助となっています。
いのち会議は、ノックオンザドアのような活動を起点に、多くの民間企業が持続可能な形で希少・難治性疾患の患者・家族と共に社会課題解決を目指す活動を推進し、すべての「いのち」が自分らしく輝く未来に近づけていきたいと考えます。
【参考情報】
・希少疾患患者・家族会の取り組み
一例:アラジール症候群の患者・家族会
公式サイト:http://alagille.jp/
・RDD Japanの取り組み
公式サイト:https://rddjapan.info/
・ノックオンザドア社の取り組み
公式サイト:https://knockonthedoor.jp/
【関連するいのちパネルのテーマ 】
1. 医療・福祉
【関連する「いのち」】
いのちを「はぐくむ」
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3. すべての人に健康と福祉を
17. パートナーシップで目標を達成しよう
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